放棄出願・特許を復活させる手続きを厳格化

USPTO規則改定:公開2026-06-24

Summarized by Tatsuo YABE  2026-06-30

米国特許制度でユニークなものとして、放棄出願の復活、維持費用未払いで放棄となった特許の復活、優先権を回復させるという手続きがある。要件としては、復活・回復のための請願費用の支払いと「遅延した期間全体に渡って意図するものではなかった(“The entire delay was unintentional”)」という陳述をすること、且つ、USPTOが追加説明を求める場合にはそれに対応するということであった。なお、遅延期間が2年を超える場合には、「遅延期間全体に渡って意図するものでなかった」という事実を詳細に説明することで対応が可能であった。今回の規則改定によって、遅延期間が2年ではなく1年を超える場合に詳細な説明を求めるということになった。

適用:2026813日以降の請願~

長期間放棄された出願や失効特許について第三者は、それら権利は存在しないと信頼して事業活動を行う場合がある。 したがって、何年も経ってから簡単に権利を復活できると、特許権の予測可能性(predictabilityが損なわれるというのが現実問題としてある。 一言でいうとUSPTO2026813日以降、「Unintentional Delay(意図しない遅延)」を理由とする復活請願(Petition to Revive等)について、従来の「2年ルール」を「1年ルール」に厳格化する。

従来の運用(2026813日まで)
放棄出願の復活、維持費用未払いで放棄となった特許の復活、優先権の回復において、遅延期間が2年以内なら、"遅延期間全体に渡って意図していなかった"という定型文の陳述だけで認められることが多かった。一方、2年超の場合は、USPTOが追加説明を要求するという規則であった。

今後の運用(2026813日以降)
USPTO2 → 1へ変更する。つまり、以下のいずれの場合でも、1年を超えてから請願する場合

については、単なる"The entire delay was unintentional."だけでは足りず、追加説明が必要となる。 

USPTOが求めるもの
USPTOは、遅延の経緯の説明を要求する。すなわち、権利の復活・回復を請願する者は「遅延期間全体(entire delay)が本当に意図しないものだったのか」を詳細に説明しなければならない。

手数料は変更なし
請願料金が適用される閾値が2年超 → 1年超へ変更されるのみ。

出願人

1年以下の場合

1年超の場合

Micro Entity

$452

$ 600

Small Entity

$ 904

$ 1,200

Large Entity

$ 2,260

$ 3,000

日本企業への影響
今回の規則改定による日本企業への影響は殆どないだろう。

知財部に有資格者がいるような日本企業(Large Entity)では、Petition to Revive(喪失した出願・権利を復活させるための請願)と言う制度を使ったことすらないだろう。企業知財部、日本の弁理士事務所、さらには米国代理人事務所(多くの場合USPTOから期限付きの通知が発行されると自動的に期限が入力される。手入力無し)の3重構造で期限管理を行っているので、この網の目をくぐることは略ない。OA応答期限徒過(出願放棄)、維持費用の未払い(権利失効)は全て費用対効果を検討し企業の知財部で判断し決定する。その決定は弁理士事務所及び現地代理人に知らされる。故に、期限徒過は意図するものではなかったという言い訳はできない。敢えて「意図的ではなかった」と陳述し権利を復活させて権利行使をしたならディスカバリーによって不公正行為が露呈し権利行使不能となるだろう。

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追加コメント:

[1] この復活の請願手続きを不正に活用した裁判例は?

In re Rembrandt Technologies LP Patent Litigation, 899 F.3d 1254 (Fed. Cir. 2018)

本件は、Rembrandt Technologies LPが多数のケーブル会社を相手に特許侵害訴訟を提起した事件である。Delaware地裁は最終的にRembrandt敗訴とし、さらに本件を例外的な事案(Exceptional Case)と認定し、被告側に約5,100万ドルの弁護士費用を認めた。CAFCは、例外的な事案の認定自体は維持したが、弁護士費用額については、問題行為との因果関係を十分に挙証していないとして差し戻した。

問題となった行為の一つが、2件の特許の維持費用未納による失効後の復活だった。元の特許権者Paradyneは、当該特許に商業的価値がないと判断して維持年金を支払わず、特許を失効させた。その後、第三者による取得・活用の関心が生じたため、USPTOに対し「維持年金不納の遅延は意図的ではなかった」と記載して復活請願を行い、特許を復活させた。

CAFCは、この「意図しない遅れ(unintentional delay)」の説明について、地裁による不公正行為(inequitable conductの認定を支持した。理由は、単なる事務ミスや誤解ではなく、Paradyne内部には「維持費用を払わなければ権利を失う」ことを理解していたことを示す証拠があり、さらに特許を放棄するかどうかを検討する会議にも関係者が参加していたという事実があった。本件は「意図しない遅延による権利復活」制度の悪用を示す顕著な判決である。

[2] Broadening Reissue(発行後2年以内であれば再発行出願で権利範囲を拡大可能)に対しても第3者に救済措置があるのに、復活した特許に対する救済措置はないのか?

維持費用不納で失効した特許の復活については、法定の intervening rights (中用権)がある。米国特許法41(c)(2) により、維持費用支払い期間経過後(*)から、遅延維持費用がUSPTOに受理されるまでの間に、特許発明品を作った・購入した・販売申出した・使用した・輸入した第三者は、その具体的な物について継続使用・販売等ができる。また、裁判所は、その期間中に事業開始または実質的準備をした者について、衡平上相当な範囲で継続製造・使用・販売やプロセスの継続実施を認めることができる。(米国特許法252条:再発行出願に対する中用権と類似)

MPEP 2591にも “Intervening Rights in Reinstated Patents” として明記されており、遅延維持費用の受理により復活した特許には §41(c)(2) の中用権が適用される旨が記載されている。

整理すると:

Broadening reissue

35 U.S.C. §252 の中用権あり

維持年金不納による失効特許の復活

35 U.S.C. §41(c)(2) の中用権あり

放棄出願の復活

条文による救済はなし;但し、裁判官の裁量権でEquitable Remedies(衡平法による救済)がある。

(*) 米国では権利を存続させるには、米国特許発行後、3.5; 7.5; 11.5年経過後に維持費用を支払う必要がある。それぞれの期限には半年のグレースピリオドがあるので、現実には米国特許発行後4年、8年、12年が支払い期限となる。但し、維持費用はかなり高額(11.5年:$8280)となるので、技術の陳腐化が早い電機・機械・コンピューターの技術分野では11.5年目の維持費用は支払われないケースが多い。

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(1) US_Patent Related 

(2) Case Laws 

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